株式流通市場

株式流通市場では、世界各地で起こっている様々なニュース等が証券価格に反映している。これを市場の価格発見機能を呼ぶ。では、株式流通市場に関する基本的な流れをみていこう。

1、基本的なメカニズム

(1)注文伝達…まずは投資家から注文を受けてマーケットに伝達する機能である。これはブローカレッジ機能とも呼ばれ、証券会社であるブローカーは手数料を収益としている。

(2)約定…集められた注文を突き合わせて取引を成立させる機能である。従来は証券会社が注文伝達機能を担当し、取引所は約定成立機能中心という構図だったが、現在は電子化の進展もあり、証券会社自身が約定成立機能を提供するケースが増えてきている。

(3)受渡しと決済…取引成立後の証券の受渡しと現金決済システムについての機能のこと。この機能は、売買された有価証券の受渡しと代金決済により完了する。 受渡しと決済は最も重要であり、間違いなく確実に実行されることが求められている。その為に、現在では以下の2つの期間によりしっかりとシステムが管理されている状況だ。

・清算機関
決済の為に必要な計算処理等の清算業務を行う機関で、2003年1月から統一清算機関である日本クリアリング機構行っている。また、清算機関は全ての市場参加者の取引機関となっているので、セントラルカウンターパーティーと呼ばれている。

・決済機関
証券やその代金を受渡す決済業務を行う機関で証券保管振替機構、通称ホフリがその役割を担っている。証券保管振替機構は、市場参加者から預託された株券等を保管し、売買等で受渡しが発生したときは帳簿上の振替で処理をして証券決済業務の効率化を目指している。 現在は株式売買の決済は約定日を含めて4営業日(T+3)目に株式と資金を同時に受渡しするDVP方式が採用されている。今後は翌営業日(T+1)決済を目標としている。

(4)取引情報公表…取引成立に至るまでの一連の情報を参加者全体、社会全体に対して伝達する機能である。 これは従来は情報ベンダーが担っていたが、電子化が進んだことにより、今では取引所自身及び証券会社自身が情報の公開や伝達まで扱うことが可能になってきている。

2、株式派生商品市場

(1)取引所で取引されているデリバティブ
株価指数を対象にしている先物やオプション、個別株を対象とした株券オプションがある。取引方法が証券取引所で画一的に決められているので、取引動機や戦略の異なる投資家が参加しやすく結果として流動性が高くなる。
※ここでいう投資家とは、ヘッジャー、スペキュレーター、アービトラージャーのこと)

(2)証券会社との相対取引で行われるデリバティブ
株価指数に関するオプションと債券を組み合わせた商品、つまり株価指数連動型債券などがある。

3、単元株

単元とは上場企業の売買単位のことをいう。2001年の改正商法(現:会社法)により導入された。企業は単元株数を自由に決めることができる。 また、1単元未満の株数は証券取引所で売買ができないので証券取引所以外で売買することとなる。

4、株式売買の仕組み

(1)オーダードブリン型
日本の証券取引所はオーダードブリン型を採用している。これは競争売買によって売買契約が締結されるタイプの市場において、市場参加者からの指値注文がマーケットメイカーの代わりに流動性を供給する役割を果たしている。オーダードブリン型では、投資家の注文が直接突き合わされるので、売買相手となる指値注文が場にあるとは限らない。その為、取引が成立しないことや約定まで時間がかかることがある。また、売買価格を明示しない成行注文は指値注文に優先して約定が成立する。成行注文は早くて確実だが、出来高や相場変動に対応して想定外の約定価格になることがあるので注意が必要だ。

(2)マーケットメイキング型
アメリカのナスダック市場や、ロンドン証券取引所が採用している。マーケットメイカーが常時売りと買いの気配を提示し、その気配をもとに投資家は売買を行う。常時気配が提示されているので投資家はいつでも売買が可能となっている。また、マーケットメイカーは提示した気配で必ず最小単位は注文に応じなければならないルールとなっている。

5、東京証券取引所の売買の仕組み

(1)価格優先の原則と時間優先の原則
株式などの売買時には、価格優先の原則と時間優先の原則の適用がある。

・価格優先の原則…売り注文では、より価格の低い注文が買い注文ではより価格の高い注文がほかの注文に対して優先して約定する。

・時間優先の原則…同一価格の注文の間では、先に出した注文が優先して約定される。

(2)指値注文と成行注文
・指値注文…売買の際、売りたい値段と買いたい値段を指定する注文方法のこと。自分で値段を自由に指定できるので、指値より不利な約定価格がつく心配はないが、売買相手となる為の適当な注文がなければ約定がつかないというデメリットがある。

・成行注文…売買の際、売りたい値段と買いたい値段を指定しない注文方法のこと。早く確実に注文を執行させたいときには有効な手段である。但し、市場価格の急激な変動により想定外の約定価格になってしまうことがある。

(3)板寄せ
取引開始時に、取引終了時や売買中断後の最初の値決めに適用される価格決定ルールでシングルプライスオークションとも呼ばれている。約定価格決定前の注文を全て価格毎に集計した上で価格優先の原則に基づき、売り注文と買い注文の数量が合致する単一の価格を約定価格として売買を成立させる。また、取引開始前にだされた同一価格の注文は全て同時刻に出されたものとみなされるので時間優先の原則は適用されない。 板寄せの特徴としては、板寄せで取引が成立した場合は、板寄せに出した成行注文は全て約定が成立すること。また、指値注文をした場合、需給次第で指値より好条件で取引が成立することもあるが、その指値が板寄せ時の約定価格と同じときは指値注文の約定がつかないこともある。

(4)ザラバ
寄付きと引けの間の立会時間中に連続して行われる取引方法で、価格優先の原則が適用された上で、同一値段の指値注文は時間優先の原則が原則なので、時間が早いものから約定が成立する。

(5)値幅制限とサーキットブレーカー
株価の急激な変化を防ぐ為に、東京証券取引所では更新値幅と制限値幅が設けられている。 更新値幅とは、ついた約定値段を基準として約定可能な範囲が定められるというもの。注文控えに入ってる注文が少ないと約定価格が大幅に変動する可能性があるので、特別に周知する為に特別気配を表示している。これは価格継続性維持の観点に立っているからである。 値幅制限とは、一日の動きを前日の終値または最終気配値段などを基準として価格水準に応じて制限するものだ。相場が大きく変動したときに、相場の安定の為に発動される制度をサーキットブレーカーという。

(6)信用取引
証券会社が顧客に金銭や有価証券の貸付等の信用を供与して行う取引のこと。つまり、顧客が有価証券の売買を行うときに売り付けた証券や売買代金をその顧客に証券会社が貸し付けて受渡しを行う方法だ。メリットとしては、自己資金以上の売買や空売りができるので取引の活性化に繋がるということである。 信用取引には次の2種類の方法がある。

制度信用取引…貸株料と弁済の期限が取引所規則により決定されている取引だ。この取引を行うことのできる銘柄を制度信用銘柄という。また制度信用銘柄の内、取引所と証券金融会社が定める基準を満たして、調達が証券金融会社を通じて行えるものを貸借銘柄という。

一般信用銘柄…貸借金利や貸株料等を、証券会社と顧客との相対で決めるという信用取引のこと。

(7)貸株市場
貸株市場とは、機関投資家と証券会社との間で株式の貸し借りをする市場のことをいう。バスケット取引に対応する証券会社やヘッジファンド、そして貸株料収入を得る為の年金等のニーズにより拡大をした。 尚、株価が前日の終値から計算される当日基準価格よりも10%以上下げた場合は、空売りをする際の価格に制限が設けられている。

(8)取引所間の競争について
現在では東京証券取引所の取引シェアは9割を超えていて東京への集中化が進んでいる。上場企業が経費削減の観点から他市場との重複上場を見直す動きや投資家側でも売買をより流動性の高い取引所で取引を行いたいという動きが東京集中に拍車をかけたと言えるだろう。

次に取引形態だが、取引所集中義務が廃止されたことにより、証券会社が投資家と相対で株式売買をできるようになった。つまり債券と同じように証券会社自身が証券流通市場を自己完結できるシステムになったということを意味していることになるのだ。

証券会社自身が投資家と相対で株式を売買する方法としては、立会外取引と取引所外取引の2つがある。また取引所外取引の為に証券会社は私設取引システムであるPTSを用いることもある。 立会外取引は、証券取引所で行われる相対取引になる。

東京証券取引所ではToSTNeTという電子取引ネットワークシステムの市場を用いて、通常の単一銘柄取引では朝の8時20分から午後5時30分まで取引が可能だ。かなり昔の話になるが、2005年にライブドアがニッポン放送の株を一気に取得したときには、この立会外取引が利用された。

取引所外取引とは証券会社が投資家と相対で株式売買を行うことである。これには、私設取引システムを用いた売買も含んでいる。証券取引所が提供している仕組みを使わないという点で、立会外取引とは異なっている。最近ではこの取引所外取引の割合が取引所取引との売買金額比で10%を超えてきていて年々上昇傾向にある。

更に詳細について述べたいと思う。今見てきた立会外取引と取引所外取引で株式売買を行う場合には、バスケット取引とVWAPが利用される。 バスケット取引とは、機関投資家が多数の銘柄の売りや買いを1つの取引とみなして証券会社に発注する方法だ。

東京証券取引所では15銘柄以上であり且つ総売買代金が1億円以上をバスケット取引として定義しており、ToSTNeT市場にて取り扱っている。機関投資家にとってのメリットとしては、売買注文した全ての銘柄の約定が一括して完了させることができる点にある。

バスケット取引を行った後には、証券会社は日本証券業協会か証券取引所のどちらかに報告をする。証券取引所に報告をすると、証券取引所での取引と同様に決済が行われるので執行コストの面で証券会社にとっても有利となる。

VWAPとは、証券取引所で当日に約定された株価をその約定株数で加重平均した価格のことだ。つまり、当日の売買価格の実態を表している。このVWAPで約定できれば、機関投資家としては大量の株式の買いや売りを分散して執行したのと同様の効果が得ることができる。

その為、証券会社に大量の発注をする場合には、このVWAPを指定してくるケースが増加している。 では私設取引システム(PTS)についても触れておこう。

私設取引システムとは、証券会社自身が運営する取引システムのことで、証券取引所と類似している。これは1998年の証券取引法の改正により認められることになった。開設には内閣総理大臣に認可が必要で、最近では個人投資家向けにシェアが拡大されてきている。

(9)最良執行義務
取引所の取引形態を(8)で見てきたように、証券取引の選択肢が広がるということは、同時に証券会社が投資家に対して最良執行義務をより多く背負うことを意味している。

2004年に当時の証券取引法(現在の金融商品取引法)が改正されて最良執行方針を定めてそれを公表するよう義務付けられた。この最良執行方針によると、投資家からの指示がない場合には、証券会社は対象銘柄が上場している中の流動性が最も高い取引所に売注文を取り次ぐことを基本にしている。

またこの2004年の法改正により、取引所外取引での取引価格と証券取引所での価格の関連が薄まってきた。従来は、取引所外取引での取引価格は、その取引金額に応じて証券取引所で約定された直近価格の一定範囲内に収めなければならないという規則が存在していた。

法改正によりこれが完全に撤廃されたのだ。これは、最良執行義務の重要性を意味すると同時に、証券会社と証券取引所の競合関係をより一層強めることになったのだ。 尚、注文控え上の最良の価格をもった指値注文に関する情報としては、最良気配にかかる注文数量と最良気配を含む売りと買いそれぞれ上下10本の価格表示がされている。

(10)プライベートエクイティ市場
公開されていない株式への投資は、プライベートエクイティ投資と呼ばれる。この投資には、ベンチャー企業への投資と企業再生の為に非公開化された株式への投資が含めれていて、企業が成長した場合や再生が成功した場合には高い投資収益が期待できるという正に高リスク高リターンの投資と言えるだろう。

プライベートエクイティ投資は、投資家や投資家の意向を受けた機関が投資先の経営に関与しながら株式公開を達成させることに特徴がある。これをハンズオンという。 このように関与する理由としては、ベンチャー企業や企業再生を成功させるには経営力が最も重要な要素であるからだ。