経済から読み解くFX

FXとはいわば経済そのものです。経済の動きによって値動きが決まり、それを予測し利益を上げることが重要になってきます。そこで必要となってくるのがどのように為替の値動きを予測するか?です。これを理解できれば日々のトレードに大きくプラスになっていくのは間違いないでしょう。

そして為替の値動きはその通貨を発行する国家の経済状況に密接に関係しています。この経済の基礎的条件をファンダメンタルズと呼び、景気動向や金利などを分析して為替の動向を探る作業をファンダメンタルズ分析といいます。

言葉だけを聞くと何か難しいような気もしますが、 経済の強い国の通貨は価値が高くなる傾向にあり、逆に景気の悪い国や政治が不安定になったりすれば通貨の価値が低くなる傾向にある、ということなのです。しかしここで注意しなければならいことは、為替を動かす経済的要素は複数存在する、ということです。

また、経済指標は数多くあり、それらが複雑に組み合わさり為替の動きが決まっていきます。そしてもう一つ注意しなければならないのは、ファンダメンタルズ分析は大きなトレンドを予測するのにふさわしい反面、目先の値動きを予測するのには向かない、という点です。

とくに超短期で取引を行う、スキャルピングやデイトレード等の手法はテクニカル分析の方が適しています。ただ、一つの経済指標の発表でトレンドが大きく変わることもあるので油断は禁物です。

~為替の動き=通貨の価値~

FX相場は常に動いています。これは世界中の経済活動が常に動いているのと同じです。 例えば商品の価格はそれを欲しいと考える人達の需給によって決まります。その商品を欲しいと考える人が増えれば増えるほど価格は上昇し、逆に欲しくないと考える人が増えて供給が需給を超えた時、価格は減少していきます。

これは当たり前の経済活動の結果ですが、FX取引を行う各国の通貨にも同じ事が言えます。その国の景気が良ければその国の通貨を必要とする人がおのずと増えるわけですからその国の通貨の価値は上昇する…といった具合です。通常、為替を左右する要素としては景気・金利・地政学リスク・原油等の価格・政治の安定度等が挙げられます。なかでも景気動向にはニュース等でよく目にする、国内総生産(GDP)や失業率、貿易収支等が大きく関わってきます。

また、金利と通貨高は連動しています。例えばA国の景気が良かったとしましょう。しかし、B国がそれを上回る景気の良さであればB国通貨はA国通貨に対して上昇することになります。これは金利についても同じ事がいえます。一般に金利が上昇すれば通貨は高くなる傾向にありますが、金利が高くてもそれ以上に相手国の金利が上昇すれば相対的に通貨の価格は下がる…ということになるのです。

~金利と通貨の関係性~

FX取引をやっているとよく耳にする、金利というものについて説明したいと思います。まず、金利というものは貸借した金銭などに対して、ある一定利率で支払われる対価の事ですが、この金利の政策はその国の政府が決定するようになっています。

例えば景気が悪くなり、市中に出回る通貨の量が減った場合には、金利を下げることによって市中に出回る通貨の量を増やし景気対策を行います。その逆で、好景気が続けば市中に出回る通貨の量が増え、いわゆるインフレ状態になりますが、それを防ぐ為には金利を下げお金の量を減らし、常に市中のお金の量のバランスをとる…というわけなのです。

では金利が上がるとFX取引にどう影響があるのでしょうか?例えば金利が低いA国の通貨を金利の高いB国の銀行に預金すればより高い利息が得られます。そのためA国からすればB国は投資先として魅力的であり、結果的にB国の通貨の価値は上昇する、ということに繋がるのです。また、スワップポイントも金利の低い通貨を売り、金利が高い通貨を買えばその金利差分だけの利息がつくので、金利が高い国の通貨が買われやすくなる理由がそこにもあります。

~経済指標が為替に与える影響~

まず、金融政策に注目しましょう。金融政策の内容によっては、為替を大きく動かします。金融当局は、いろいろな経済指標を見て景気判断を行っています。そして、金利やマネーサプライ(通貨供給量)の調整といった金融政策を行います。

為替市場は、発表される経済指標によって大きく動きます。その為、主要各国が発表する景況感の調査に注目しましょう。例えば、日本で一番影響が大きい経済指標に、日本銀行が発表する『全国企業短期経済観測調査(日銀短観)』というものがあります。これは、四半期(3か月毎)に発表されて為替に大きな影響力を与えます。その他に日本の経済指標で注目したいものとしては、内閣府が発表する『景気動向指数』と『国内総生産(GDP)』、経済産業省が発表する『鉱工業指数』があります。また、経済指標の他にも頭に入れておきたいことがあります。それは、貿易収支です。

貿易収支は輸出額と輸入額との差であり、輸出が輸入を上回れば貿易黒字、輸入が輸出を上回れば貿易赤字になります。もし、貿易黒字が膨らめば、海外から流入した外貨を自国通貨に替える必要性が生じます。その結果として、貿易黒字は自国通貨高(自国通貨買い)になります。

~通貨の強弱について~

為替は世界経済の状況や政局によっても大きく動きます。もし、政情不安となればその国の通貨は下落する傾向となります。では、過去に円安や円高を招くことになった大きな出来事をいくつか紹介しましょう。

-2006年のサブプライムローン危機-

アメリカで住宅購入者向けサブプライムローンの不良債権化が問題となりました。その後2007年の夏辺りから住宅価格の下落が始まり、サブプライムローンの証券化商品の価格が下落します。それにより、世界規模での金融危機が発生。結果として、米ドルは対円で大きく下落したのです。つまり、円ベースで見れば、大きく円高に動いたことになります。

-2008年のリーマンショック-

サブプライムローン問題に端を発してアメリカのバブルが崩壊してしまします。それにより金融資産が暴落し、2008年9月15日にアメリカの投資銀行大手であるリーマンブラザーズは経営破綻となってしまいます。ここから世界的な金融危機が始まり、急激な円高ドル安相場となったのです。

-2011年の東日本大震災-

2011年の3月11日にご存知の通り大震災が発生。当初は、投機的な円買いが入り75円台を付けました。ただ、このような大震災などの大災害は国の経済に大きくマイナスの影響を及ぼすと考えられるので長期的には円安トレンドになっていくのです。事実、円高一服後には徐々に円安トレンドを形成していくことになりました。

-2013年の日銀大規模金融緩和-

2013年4月に日銀の総裁に就任した黒田総裁が量的質的金融緩和を発表しました。内容としては、これまでのデフレからの脱却を目標に掲げたもので、2年間で前年比2%の物価上昇を目指すものでした。つまり、市場に供給するするマネタリーベースを倍増させるということですので、円安要因となります。ここから、ドル円は一気に円安に動くことになりました。

その他為替が動く要因…テロや戦争といった有事の出来事があったときにも為替は変動します。かつては有事のドル買いと言われていましたが、最近は、有事の際には『米ドル』よりも最も安全な資産として『円』が買われやすく円高傾向になるケースが多くなってきています。云わば、有事の円買いうことでしょう。

~日本の経済指標~

毎営業日、世界各国でたくさんの経済指標が発表されています。勿論、全ての国の経済指標を把握するなんてとてもできませんし、それを試みようとしても効率が非常に悪くなります。ただ主要な国の指標、取り分け特に重要な指標は相場を動かす可能性がありますので日頃から把握しておくよう心がけましょう。世界的に注目されている指標は、アメリカの経済指標、特に雇用統計ですが、その他にもユーロ圏の経済指標であったり、要人発言などは相場を大きく動かす要因になります。今回は、主要国の中でも我が国での重要な経済指標について8つ取り上げました。まずは、前半の4つについて見ていきましょう。

1、景気動向指数

毎月、内閣府が発表するもので、産業/労働/金融といった経済活動における指数動向を元に算出しています。 景気に数か月先行して動く『先行指数』、ほぼ一致して動く『一致指数』、そして数か月から半年程度遅れて動く『遅行指数』の3本の指数があります。これらにより、景気が今後どうなっていくのかを予測することが可能なのです。

2、国内総生産【GDP】

年一回(速報値は3か月毎)に内閣府が発表するもので、国内で新しく生産された商品やサービス等の付加価値の総額です。この伸び率がそのまま経済成長率に繋がるので、現在は約500兆程度ですが、安倍政権は新3本の矢で将来的目標として600兆を掲げています。また、速報値とは大体の目安で発表する数値で、値が確定後に発表するモノを確報値(確定値)と言います。

3、鉱工業指数

毎月、経済産業省から発表されるもので、工業と一部の製造業の生産量を指数としてまとめた数値です。約600品目の鉱工業生産について1か月ごとの生産量を調査します。製造数が増えれば指数は高くなり、それにより景気が上向いたと判断されるのです。

4、景気ウォッチャー調査

毎月、内閣府が発表するもので、タクシーの運転手やコンビニやスーパーマーケットの店員、娯楽産業の店員といった景気に敏感な産業に従事している人達を調査します。調査内容としては、3か月前と比べた景況感を5段階評価で回答してもらいます。鉱工業指数と比べると、3か月先行していると言われています。

~日本の経済指標【2】~

残りの重要な指標をご紹介する前に、経済指標で何に注目すればよいのか?ということについて少し記述します。それは、発表される数字だけを見て相場が動くのではないということです。重要なことは、事前の市場予想と対比してどの程度乖離が生じているかということです。

そして予想との乖離が大きければ大きい程、市場に与えるインパクトが強くなります。一般的には景気にプラスの内容であれば通貨高となります。しかし、プラスであったとしても事前予想よりもプラス幅が小さいとなれば市場は失望し通貨安に動くケースもあります。その為、常に事前予想との比較をしながら数字はチェックするようにしましょう!

では主な経済指標8つの内後半の4つについてご紹介します。

5、有効求人倍率

毎月、厚生労働省から発表されていて仕事を探している人、一人当たりに何件の求人があるかを示している指標です。もし有効求人倍率が1倍を割っている場合は、仕事を探している人の数に求人数が達していない状況を表しています。その結果として、有効求人倍率が高くなれば景気が上向いたと考えて通貨高になるケースが多いのです。

6、日銀短観(全国企業短期経済観測調査)

4月/7月/10月上旬/12月中旬に日本銀行から発表されていて、日銀の金融政策担当者が企業の経営者に景況感をアンケートして、その結果をまとめたものです。『売上高』『雇用者数』『借入金』などの数字のチェックを行う他にも『在庫調整』『設備投資』などの細かい調査も行っていますので、景気状況を判断するにはかなり信頼できる指標です。

7、消費者物価指数

毎月、総務省から発表されていて、小売価格の変動を指数化したものです。これは国民の生活水準を示す指標であり、数値が前回よりも上昇している場合は景気が良くなっていると判断されます。

8、完全失業率

毎月、総務省から発表されていて、労働力人口の内『完全失業者』が占める割合です。労働力人口とは、満15歳以上の『従業者』『休業者』『完全失業者』を合わせた数値のことです。ここで注意しておきたいのは『完全失業者』です。この定義は、『仕事をする意欲はあるけれども、職に就けていない人』のことを言います。つまり、『職探しを諦めた人』は入っておりませんので、一概に失業率が下がったからといって詳細を確認しなければ諸手を挙げて喜ぶことはできないでしょう。

以上が、主な日本の経済指標となります。指標によって相場が上下する要因となりますので、上手く読み込んで利幅拡大に繋げていきましょう!

~米国の経済指標~

為替の変動に大きな影響を与えているのは、アメリカ経済の状況です。その為、アメリカの重要な経済指標については常に注意するように心がけましょう。まず、アメリカの金融政策を決定するのはFOMC(連邦公開市場委員会)です。

年8回、6週間おきに委員会が開かれて、金利やマネーサプライといった金融政策が決定される場です。そもそもFOMCとは、アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)の理事7名と、各地域の地区連銀総裁5名で構成されている委員会です。金融関係の要人たちが集結する場ですので、ここで決定される政策金利(FFレート)という短期金利は為替に大きな影響を与えます。

では、これ程まで重要なFOMCでの金融政策は、何を材料にして決めているのでしょうか?それが、正にアメリカの経済指標なのです。アメリカには、為替に影響を与える経済指標は数多く存在します。100近くはあるでしょうか。でも、全ての指標を気にしている時間もありませんし、そんな必要はないと考えています。

その中で、是非とも注目しておいてほしい経済指標の8つを抽出しました。

  • (1)非農業部門雇用者数&米失業率
  • (2)消費者物価指数
  • (3)ISM製造業景況指数
  • (4)ISM非製造業景況指数
  • (5)鉱工業生産指数
  • (6)ベージュブック
  • (7)住宅着工件数
  • (8)GDP統計

以上が、特に重要だと考えているアメリカの経済指標です。

~米国主要な経済指標~

数多く発表される米国の経済指標の中でも、為替に大きく影響を及ぼす代表的な指標8つの詳細を見ていきましょう。

ここで注意してほしいこととしては、経済指標とは市場が事前に予想した数値が実際に発表された数値といかに乖離しているかということが重要ということです。この数値の乖離幅が拡大する程サプライズが大きくなり、結果として為替がとても変動するということです。

(1)非農業部門雇用者数【Nonfarm Payroll Employment(NFP)】

アメリカ労働省が毎月第1金曜日に発表しています。同日発表される米失業率と同様に最も注目されている指標の一つです。これは、農業以外の産業に従事する労働者の増減を数値化したもので、毎月の変動が激しい為にサプライズとなることも多いのです。但し、農業従事者の定義として経営者や自営業者の数は除きます。

(2)消費者物価指数

アメリカ労働省が毎月中旬に発表していて、消費者が購入した商品やサービスの価格の変化を示しています。この指数により物価の動向を見て、金利上昇に繋がるインフレの兆候を探ることが可能となっています。

(3)ISM製造業景況指数

全米供給管理協会が毎月第1営業日に発表している製造業の景気転換の先行指標です。主要な経済指標の中で最も早く発表され、50%を境に景気の良し悪しを判断しています。400人以上の購買、供給管理の責任者にアンケートを取って集計しているので、かなり市場を正確に反映している数値と言えそうです。

(4)ISM非製造業景況指数

全米供給管理協会が毎月第3営業日に発表している非製造業の景気転換の先行指標です。(3)と同様に50%を境に景気の良し悪しを判断しています。米国ではサービス業の割合が多いため、注目されている指標の1つとなっています。アンケート調査規模についても、(3)と同様となります。

(5)鉱工業生産指数

FRB(連邦準備制度理事会)が毎月中旬に発表していて、鉱業の他に製造業や電力、そしてガスなどの実質生産を計測する指標として用いられています。これにより、景気実態をいち早く把握することができます。ただ、ここでいう【製造業】とはハイテク産業と自動車産業を除いた数値となっています。

(6)ベージュブック【米地区連銀経済報告】

FRB(連邦準備制度理事会)が年8回(FOMC開催の2週間前の水曜日)に発表しています。 地域の経済状況を全米12地区の連邦準備銀行がまとめた報告書です。消費支出や製造、サービスといった各分野の状況をまとめており、FOMCで金融政策を決める判断材料として使われています。またベージュブックとは、表紙の色がベージュ色をしていることから、このように名付けられています。

(7)住宅着工件数

アメリカ商務省が毎月第3週に発表していて、1か月の内に建設された新築住宅の数を示す統計です。景気の動向に敏感な先行指標であり、同時に発表される建設許可件数にも注目しましょう。この数値が良い場合、家具や家電といった関連商品の需要が増加して景気が良いと判断されます。また住宅ローンの影響から、数値は金利状況にも影響を受けています。

(8)GDP統計

アメリカ商務省が速報値として1月/4月/7月/10月の下旬に発表していて、経済全体の成長率を推測することができます。消費や投資、そして総輸出などの幅広い経済分野の動向が反映されていてマクロ経済を考える上でとても重要な統計と言えます。この統計の他に、インフレかデフレかを物価変動の程度で推し量るGDPデフレーターという指標もあるので合わせて注目したいところです。

この他にも、アメリカには為替を動かす指標がありますが、まずはこれらの数値を意識するように心がけてみましょう!

~為替を動かす出来事~

為替が動く要因としては経済指標や金融政策の他に、【地政学リスク】というものがあります。これまでアメリカは世界の警察と言われてきました。その所以は、世界各国の紛争に関わってきたからです。その為、世界のどこかで紛争が起こるたびに米ドルやその他アメリカと関連する国の通貨が大きく動いてきました。

昔は『有事のドル買い』と言われて、紛争が起こるたびに信用力の高い通貨として米ドルが買われてきました。ところが最近は、地政学リスク上昇の際には、より安全な資産として円やスイスフランが買われるようになっています。

正に、『有事の円買い』や『有事のフラン買い』と言うことです。歴史を少し遡ってみると、1991年の湾岸戦争では、開戦時はドル安となりましたが終戦時は急激にドル高に動いています。2001年の9・11では、発生以降かなりドル売りに傾斜しています。

2003年のイラク戦争では、開戦直前まではドル買い、その後は一気にドル安に転じています。これを見ると、格言通り『有事のドル買い』というわけではありませんが、ドルを上下に大きく動かす要因にはなっています。

その他にも、為替を中長期的に動かすものとして【通貨政策】というものがあります。代表的な政策として、1980年代のレーガン政権時代に打ち出した『強いドル』政策です。

これにより暫くドル高が続ことになりましたが、長年のドル高の進行でアメリカの産業に空洞化が生じてしまいました。その為、今度は真逆の政策としてドル安政策に転じたわけです。これをプラザ合意と言います。

1985年9月に先進5か国の蔵省と中央銀行総裁が集まってドルの独歩高を是正する合意をし、その結果として歴史的な大きな転換点となりドル安が進行しました。このように、為替には短期的な流れ以外にもファンダメンタルズの要因で中長期的トレンドを形成するケースがあると言うことを頭にいれておくと良いでしょう。